【簿記1級合格への道】外貨建て有価証券の換算について

簿記試験

こんにちは。ヒトツメです。
前回は直近の過去問の問題を読んで、学習進捗状況を確認しました。とはいえ、問題を読んで意味が分かるだけでは、もちろん合格はできません。
そこで、論点別に問題演習をしていく前に、しっかりと過去問の形式に慣れて、何を問われているのかがわかるようになる必要があります。そうすることで、苦手な論点をあぶりだすということもできます。
そういった中で、こちらの「日商簿記1級講師が選んだ過去問題集」という過去問題集が評価が高そうだったので、着手することにしました。

ちなみに、以前は、こちらの「網羅型予想問題集」に先に着手することを考えていましたが、先に問題形式になれるために、過去問から着手することにしました。

今日は、その中で、第150回の商業簿記の問題で、問題文を読んでいる中で、完全に思考が停止してしまった、外貨建て有価証券の換算について、まとめていきたいと思います。

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金融商品に関する会計基準

保有目的観点

外貨建て有価証券の換算について整理をする前に、そもそもの有価証券の処理方法を理解しておく必要があります。大抵の教科書では、保有目的に応じた分類・分類ごとの会計処理・減損の場合の処理といった順番で記載がなされており、「覚えることが多いなぁ」となるのが多くのパターンです。
なぜこのような記載があらゆる教科書で記載されているかというと、「金融商品に関する会計基準」にそのように書いてあるからです。

有価証券については、保有目的等の観点から次のように分類し、それぞれ貸借対照表価額及び評価差額等の処理方法を定めた。
(1)売買目的有価証券 …
(2)満期保有目的の債券 …
(3)子会社株式及び関連会社株式 …
(4)その他有価証券 …
(5)時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券 …
(6)時価が著しく下落した場合 …

「金融商品に関する会計基準」69以下

まさしく、この部分の記載に関する内容が、そっくりそのまま教科書に記載されている、ということになっています。
どのように経理処理をするべきかを考えた人が書いた順番ですし、基本的には会計基準に記載されている内容は、一番わかりやすく書かれているはずです。なので、どうしてもこの順番で理解していくしかありません。

売買目的有価証券

そこでまずは売買目的有価証券についてですが、続いて、このように記載されています。

時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券(売買目的有価証券)については、投資者にとっての有用な情報は有価証券の期末時点での時価に求められると考えられる。したがって、時価をもって貸借対照表価額とすることとした。

「金融商品に関する会計基準」70

ここで重要なことは、「投資家にとっての有用な情報」という部分です。経理処理をする人の利便性は何も考えていません。結局、財務報告は投資家に情報提供するためのものでしかありません。なので、常に投資家目線というのが一番重視されます。
その上で、結局、投資家からしてみれば、売買目的で保有している有価証券については、企業の株式を保有することによって、間接的に売買目的での有価証券を保有しているにすぎないということが、ここで書かれていることです。いつでも売却することができるはずですし、仮に有価証券保有のみ差がある二つの企業が存在した場合、「保有していない企業の株式+売買目的有価証券」という投資と、「保有している企業の株式」という投資には、経済的な価値の差はないはずです。
なので、このような有価証券は時価によって評価し、評価差額は当期の損益として処理することとなります。

満期保有目的の債券

一方で、満期保有目的の債券については、すぐに売却をしては意味がありません。あくまで満期保有という一定の条件によって得られるメリットを目的としています。

企業が満期まで保有することを目的としていると認められる社債その他の債券(満期保有目的の債券)については、時価が算定できるものであっても、満期まで保有することによる約定利息及び元本の受取りを目的としており、満期までの間の金利変動による価格変動のリスクを認める必要がない

金融商品に関する会計基準」71

先ほどと同じ「投資家の目線」を持ち出した場合、満期保有目的の債券については、間接的な投資という意味で評価されるべきではなく、保有することで得られるメリットを重視して評価されるべきです。したがって、取得価額で評価すべきです。
仮に満期まで保有し続けなければならないというデメリットを考慮して、割り引いて取得しているとすれば、その時の差額を各期に振り分けながら貸借対照表価額とすることは必要ですが、時価変動による評価差額は関係ないはずです(つまり、時価が多少変動したとしても、満期に得られるメリットが変わらなければ、その部分を期末に評価する必要はないはず、ということです)。

なお、この時の振り分けの部分については、以前金利調整差額の話をまとめたときに触れています。

子会社株式や関連会社株式の場合でも、本質的には同じです。「いつでも売却できる資産」ではなく、「保有することに意味がある資産」となっているという意味で、取得価額で評価するべきです。

その他有価証券

そして、これらのいずれにも該当しないものについては、様々な要素が含まれることが考えられるため、間をとって、最も不都合が少ない処理を実施するべき、とされています。

そこで、金融商品に関する会計基準では、次のような処理方法を採用することとしています。

  • 投資家にとって有用な投資情報とするため、時価で評価する
  • 直ちに売却できるとは考えられないから、評価差額を直ちに当期の損益として処理はしない
  • 以上より、損益はそのまま「純資産の部」に計上する

外貨建て換算について

売買目的有価証券は決算時の為替相場

以上のような分類から考えると、外貨建てで保有しているとしても、売買目的有価証券の場合は、投資家の目線では、為替リスクも含めた形で有価証券を保有しているにすぎません。したがって、決算時の為替相場で時価を算出し、取得時の為替相場との差額を損益として評価するべき、ということになります。
外国株投資の際に、為替リスクも考慮して損益を計算する感覚と非常に近いものがあると思います。

満期保有目的の債券は償却原価法の有無による

一方で、満期保有目的の債券に関しては、少々事情が異なります。
満期保有目的債券は、満期に得るメリットに価値があるわけですから、取得原価と取得時の為替相場で価値算定を行います。ただ、外貨を保有している場合に発生する為替差損益は、期末ごとに評価しなければなりません。その時、取得原価を決算時の為替相場で評価するのではなく、時価を決算時の為替相場で評価しなければならないとされています。

その上で、償却原価法を用いる場合、利息部分については、為替差損益とは別に管理をしなければなりません。且つ、通常の場合とは異なり、単に期間をベースとして考えるだけでは足りず、その時々の為替相場に応じて、償却率を考える必要があるとされています。これは、保有期間に応じて得た外貨建ての利息を、その時々の為替相場に応じて評価するという処理と理解することができます。したがって、利息部分については、期中平均の為替相場を用いて計算しなければならないとされています。

その他の有価証券の場合は決算時の為替相場

最後に、その他の有価証券の場合ですが、その評価差額を純資産に直入させるのは、投資家に対して適切な情報を与えるためでした。したがって、「いま」投資対象の企業が、どんな資産を保有しているかを開示するため、その他の有価証券は決算時の為替相場を用いて、その価値を算定するべき、ということになります。

さいごに

このように整理してみると、結局、評価差額や額面との差額は、それがなぜ発生するかによって、どの為替相場を用いるべきかが決まるということになります。
これを理解せずにやみくもに「この場合はこの相場」といった形で覚えてしまうと、結局いつか忘れてしまいます。

一夜漬けの勉強にならないように、会計基準の考え方のところなどある程度目を通しながら、本質から考えていかないと、多岐にわたる論点をすべて抑えることは難しいように思います。

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