条文を一から読む
条文素読は効果的??
こちらの記事でも紹介している通り、条文知識が問われる試験では、条文を一から順番に素読することが極めて重要です。
多くの受験生は、条文を一から読むという極めて苦痛な作業をせずに試験に挑みます。
一方で、試験問題を作る側からすると、条文知識を問うための問題は、条文を読みながら作成します。
ということは、問題はすべて条文に答えが書いてあるということになります。
なので、条文を一から読み、「ズバリ何と書いてあるのか」を知ることは極めて重要です。
条文を読むのが苦痛な理由は?
と言っても、一から条文を読むのは、極めて苦痛な作業です。
出来ればやりたくないですし、法学部出身でなければ、第1条を読んだ時点でなんだかよくわからず眠くなってきます。
その理由が、今日のテーマであるパンデクテン方式と呼ばれる方式です。
パンデクテン方式とは、「一般的ないし抽象的規定を個別的規定に先立ちまとめることにより、法典を体系的に編纂することに主眼をおいた著述形式」です。
つまり、より一般的でより抽象的な内容を先に記述し、個別具体的な規程はより後ろに記載されます。
条文を第1条から読むのが苦痛なのは、まず最初に抽象的な話が登場するからという他ありません。
具体的なイメージができない抽象的な話を最初に聞き、個別具体的な話がいつまでも出てこないと、なかなか理解できずしんどくなってしまいます。
苦痛を和らげるための方法は?
そんな時に、素読をするうえで非常に重要なことは、抽象的な話を平易に置き換えるという作業です。
例えば労働基準法の第1条には、次のように記載されています。
第一条
1 労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。
2 この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。
これだけだとよくわからないですが、第1項はつまり、「この法律は、労働者が普通に生活するための最低限の労働条件というものについて規定しますよ」ということを示しています。
ここにいう「人たるに値する生活」つまりは「普通に生活する」ということですが、これが何なのか、それを守るための労働条件が何なのか、ということが、後ろに進むにつれて書いてあるということが分かります。
実際に、第2項で、「この法律で定める労働条件の基準は最低のもの」と断っています。続けて、「労働関係の当事者は、…その向上を図るように努めなければならない」と記載があるので、この法律では、最低限の労働条件プラスアルファ守った方が良いことが書いてあるということになります。
このように、ただ文章を追うのではなく、つまりどういうことか、この後にどんなことが書いてあるのかを想像しながら読むと、苦痛は大幅に和らぎます。
一般法と特別法
さらにこのパンデクテン方式は、一つの法律の中だけではなく、複数の法律をまたがって使われています。
例えば、民法の中にも労働契約に関係する規定がありますが、より一般的なルールである民法を上書きするような形で、労働契約法は存在します。
これを一般法と特別法の関係にあるといいますが、より個別具体的なルールは、法令集に編纂される際にはより後ろに掲載されるのが一般的です。
他にも、例えば、労働衛生安全法は、もともと労働基準法の中に組み込まれていました。
より規制の内容を明確にしたりするため、こういった分離がなされることがありますが、だからと言って、労働衛生安全法は労働基準法と目的を異にするわけではありません。
結局は同じ目的なわけで、労働基準法を理解した上でないと、労働衛生安全法を完全に理解できるとは言えません。
関係性を理解しながら読み進める
このように、より後半に進むにつれて、より個別具体的な、より特別な規定が置かれることになります。
そのことを意識しながら読むことで、「なぜこのような条文が置かれているのか」という理解もスムーズに進みますし、覚える量もより少なくて済むようになります。
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