パンはどうして膨らむか?
イースト菌の発酵
ふっくらとしたパン。コーヒーとの相性は抜群で、甘い小麦の香りが漂ってくると、ついつい食欲がそそられます。
そんなパンが膨らむ理由は、イースト菌によって糖が分解され、アルコールと二酸化炭素が発生し、それが熱によって膨張するからです。
そして、おおむね80度から90度くらいで小麦の生地が固まり、膨張した生地が維持されるため、焼いた後もふっくらとしたスポンジのような状態が維持されます。
この時、アルコールや二酸化炭素は、小麦粉を水で寝ることによって発生するグルテンというたんぱく質によって保持されます。
ただイースト菌が入っただけの水分量が多いドロドロの液体のままでは、発生したガスがすべて抜けてしまい、焼成の段階で抜けきってしまいます。
イースト菌が作ったガスの元を、小麦粉のグルテンがしっかりと抱きかかえながら焼成が進むことで、パンはしっかりと膨らみます。
好気呼吸と嫌気呼吸
ちなみに、このイースト菌による分解は、無酸素の状態で行われます。
イースト菌は、酸素が豊富な状態と、酸素があまりない状態では働きが異なり、かなりざっくりいうと、酸素が豊富な状態で菌を増やし、酸素があまりない状態でアルコールと二酸化炭素を発生させます。
インスタントドライイーストを使うケースでは、菌の数が十分なので、酸素を取り込んで菌を増やすようなことは考えなくても問題ありませんが、自家製酵母の場合に、発酵させるために溶液を振り、酸素を取り込むのはそのためです。
パンが膨らまない理由
シンプルに菌の量が少ない
さて、以上を踏まえて、ふっくらとパンが膨らまず、重たい状態になってしまう原因についてですが、一番に考えられるのは、菌の量が少ないことが考えられます。
パン生地をこねると、酸素を取り込み、菌の量が増殖し、生地の中の酸素が使い尽くされると菌の量は頭打ちし、アルコール発酵が進んでいきます。これが一般的な生地の発酵過程です。
ただ、菌の量が少ないと、アルコール発酵まで進まず、生地は膨らみません。
インスタントドライイーストの場合、イーストの中の菌が不活性になっているか、イーストの量が少ないのが主な原因です。
自家製酵母の場合、発酵が進んでいないことが、主な原因となります。
糖質が足りない
また、イースト菌は、先ほどの通り、糖質を分解してアルコールと二酸化炭素を発生させます。
この時の糖が足りないと、十分なアルコールと二酸化炭素を発生させることができず、同様にパンは膨らみません。
ただ、糖質を増やし過ぎると、浸透圧の関係で、イースト菌の中の水分が抜けてしまい、菌自体が死んでしまうので、糖質を多くすればそれで解決するというものでもありません。
適正な量の糖質を見極め、適切に発酵させることが重要です。
グルテンが足りない
また、自家製酵母の場合によくある、一番考えられる原因が、小麦粉のグルテン不足です。
一般に、製パンの際には、生地の発酵ごとに練り直しを行います。
この過程で、小麦粉のグルテンが弾性を持ち、アルコールと二酸化炭素を保持する能力が上がります。
ただ、グルテンは弾性を持った後弛緩するという性質を持っており、練った後数時間もすると、水分と結合してドロっとした状態になります。
生地全体がこの状態になると、焼成のタイミングで生地の中のガスを保持できず、焼成によるふくらみが発生しません。
焼いても生地のサイズが変わらないという場合は、ほぼこれが原因です。
自家製酵母の場合、一回一回の発酵に時間をかけるので、生地が十分に発酵して膨らんだタイミングと、グルテンの弛緩が進み過ぎないタイミングを見計らって、焼成の過程に進む必要があります。
最後に
生地が膨らまない時、発酵に問題があると考えるのが一般的です。
僕自身、そのように考えることが多かったように思います。
ただ、パンが膨らむ原理を見つめなおすと、グルテン不足が原因だったと考えられるケースはかなり存在します。
また、生地の水分量を増やし過ぎると、生地が扱いづらく、グルテンを発生させる程度に生地の捏ねができない場合が多いです。
生地の水分は、特に食パンの場合などにおいては重要で、しっとりとした食感を生み出しますが、水分を増やしすぎ、グルテンを発生させることができなければ、うまく膨らみません。
水分量は塩分濃度とも深く結びついているので、適切なバランスを見極めることが重要です。
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