【趣味のお話】映画:THE GUILTY

映画

こんにちは。ヒトツメです。
前回の映画紹介に続いて、今回は、デンマークの映画、『THE GUILTY』という映画の紹介をしたいと思います。

デンマークの映画というと、ほとんど観る機会もないですが、1980年代に立て続けにアカデミー賞外国語映画賞を受賞し、非常に盛り上がったそうで、近年でも、2010年に、『イン・ア・ベター・ワールド』という映画で同じくアカデミー賞外国語映画賞を受賞しており、良質な映画を多く世に送り出していることで知られているそうです。
今日はそんなデンマークの、スリラー映画のご紹介です。

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サンダンス映画祭観客賞受賞

この映画は、『セッション』などの映画が受賞したことで知られる、アメリカのサンダンス映画祭の観客賞を受賞し、アカデミー賞外国語映画賞でデンマーク代表で出品された映画です。ノミネートこそされていませんが、最終選考の9作品にまで残った映画です。ちなみにその年は、是枝監督の『万引き家族』がノミネートに残っている年で、日本ではそちらの行方の方が注目されていたように思います。

この映画では、ある事件をきっかけに、現場の一線から一時的に退き、緊急通報指令室で些細の事件に応対する主人公アスガーと、その周りで同じように電話を取るオペレーター、電話越しの何人かの人たち以外、登場人物はいません。
一室のみが舞台となる映画というと、1957年のアメリカ映画、『十二人の怒れる男』を思い出しますが、まさしく、「物語は脚本が面白ければ場所など関係ない」を体現しており、映画史に輝く名作に引けを取らない面白さを持っている映画だと思います。

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電話口の人はよく人を救う?

一方で、この映画の設定については、映画をよく見る人からすると、比較的ありきたりな設定です。2013年のアメリカ映画で、ハル・ベリーが主演したことでも知られる『ザ・コール 緊急通報指令室』もそうですし、オペレーターの話ではありませんが、2004年公開のキム・ベイシンガー主演の『セルラー』も、偶然つながった電話の先で、青年が奮闘し、誘拐された女性を救います。
両方とも非常に面白い映画ですし、ハラハラとさせる展開は非常に見ごたえがあります。

ただ、『THE GUILTY』の面白さは、電話一つで人を救おうとするオペレーターの活躍というよりはむしろ、電話を通してその先にいる女性を救おうとすることで、主人公本人が自分と向き合う姿が浮き彫りになっているところです。この部分に強いスポットライトが当てられており、鑑賞後の満足度が非常に高い映画だと思います。
アスガーは、妻と別居していたり、相棒が飲んだくれだったりと、アクション映画の主人公のような恵まれた人生を送ってはいません。だからこそ、アスガーに共感でき、観る人を惹きつけるのだと思います。
電話という限られた情報の中で、徐々に真実が明らかになっていく過程も面白いですし、電話の先で大変なことが起きているのに、どことなく無関心に仕事をする周囲の人たちと分かり合えなくて戦う、アスガーの奮闘も、非常に見ごたえがあります。
途中で間延びするようなこともなく、常に緊迫した空気の中で、ぎゅっと凝縮した映画時間を楽しむことができると思います。

誘拐犯への強い叱責

中でも特に印象的なのは、アスガーが、誘拐犯であるミケルを強く叱責するシーンです。ミケルは誘拐の被害者であるイーベンの元夫で、過去に逮捕歴がある男です。アスガーは彼と電話が繋がったとき、彼に対し強い怒りを感じ、非常に強億叱責します。それは、ともすればアスガーも同じような立場になったかもしれないからだと思います。罪を背負い、妻とも別居し、似た境遇にありながらも、自分は緊急通報指令室で些細な事件と向き合い、毎日苦痛でしかない。一方で、ミケルは元妻を誘拐している。そのことに強い嫌悪感と、ある種の羨ましさを感じたのだと思います。
子どもや妻への責任感のない対応と、自由に生きるその姿が、嫌で嫌で仕方がない一方で、緊急通報指令室に閉じ込められた自分との違いを感じ、自分が優位に立たないと、居ても立っても居られないといった感じかもしれません。この時のアスガーの感情を、非常に見事に演じきっているように思いました。

90分足らずの映画の中に、様々な人の想いと、罪、そして救いが込められています。緊急通報指令室のシーンのみで作られているとは思えず、本当にあっという間に観ることができるので、是非機会があれば観ていただければと思います。

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