【簿記1級合格への道】製造間接費の予定配賦(シュラッター図)について

簿記試験

こんにちは。ヒトツメです。

原価計算の勉強も進んできましたが、今日はシュラッター図を用いた、製造間接費の予定配賦と、配賦差異分析について考えてみたいと思います。シュラッター図については、わかりにくいという意見も多くあると思いますが、今日は「そもそも予算をどのようにして作っているか」という観点から、考えていきたいと思っています。

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製造間接費の予定配賦について

何のために予定配賦を行うのか

予定配賦と配賦差異分析について考えていく前に、そもそもなぜ予定配賦というものを行うのかについてですが、一般に、製造間接費は、実際配賦を行うためには、非常に時間がかかることが多いということに起因しています。
例えば、何かの製品を作るとき、電気を使ったりしますが、電気代は、月ごとに計算されます。普通は、その月の電力消費量が計算された後、電気会社が単価をかけたり調整をしたりして、最終的な値段が出てきます。大抵、これらの計算には非常に時間がかかります。それに、毎月の電気代は、その月の1日から末日までの期間で計算されることは稀で、月の途中から翌月途中までの期間に対して計算されます。
そうしてみると、製造間接費の実際配賦額を把握できるのは、翌月も後半になっていることが多々あるわけです。

そこで、前年の実績から作成される予算額と、予算策定の際に決めている基準操業度を使って、「今月はおそらくこれくらいの配賦になるだろう」と予定配賦を行います。

予定配賦率

この時、予定配賦額を決めるときに用いるのが、予定配賦率というものです。
一度製造間接費の予定配賦について勉強したことがあると、この時に変動費と固定費に分けて計算すると思ってしまいがちですが、予定配賦率の計算をするときには、変動費と固定費を分ける必要はありません

というのも、固定費は毎月基本的に同じです。たとえ非常に多くの電力を使っても、あまり電力を使わなくても、固定費は変わりません。この変わらない固定費を、全てその月の製造原価に含めてしまうと、あまり電力を使っていない月は、原価が上がってしまいます
しかしながら、これは実態に即したものとは言えません。あくまで年間計画を立てるときには、その前年の実績などを参考にしているわけで、年ベースで作られています。月ごとに、その繁閑度合いに応じて原価が変わってしまうというのは、合理的ではないということです。

なので、予定配賦をする際には、予算額を基準操業度で割って計算される予定配賦率を用いて、そこに実際操業度を掛け合わせて計算を行います。

配賦差異分析について

予算許容額と操業度差異

このように、製造間接費の予定配賦を行うわけですが、これはあくまで「予定」である以上、実際の費用とは異なってきます。そこで、「なぜそんな差が生まれているのか」ということを把握する必要があります。

先ほど記載した通り、実際に支払う固定費は、全て原価に乗るわけではありません。したがって、繁閑度合いにより、実際操業度が基準操業度と異なる場合、「実際の支払いはこの程度になるはずだ」という金額と、予定配賦額には、必ず差が生まれます。
なので、予定配賦額とは別に、「実際の支払いはこの程度になるはずだ」という金額を把握しなければなりません。これを、予算許容額といいます。これは、固定費に、変動費配賦率に実際操業度を掛けたものを加えることによって計算されます。いわば、操業度に応じた、「予想価格」です。

この予算許容額と予定配賦額の差は、繁閑の度合いによって生じた差異、つまり操業度差異として把握されます。

予定配賦額予定配賦率×実際操業度年間計画によって計算される、1製造単位当たりの製造間接費に製造数を掛けたときの結果
予算許容額変動費配賦率×実際操業度+固定費月間製造数から予想されるその月の製造間接費の合計金額

実際発生額と予算差異

そして、このような「予想価格」を計算したとしても、さらに実際の発生額が異なることは、良くある話です。そこで、実際発生額と予定配賦額との差が、予算差異として把握されます。

シュラッター図

このような差異分析を図で示したものが、シュラッター図です。
操業度差異、つまり予定配賦額と予算許容額の差は、実際操業度が基準操業度に近づくにつれて小さくなります。これは、基準操業度に近づくにつれて、固定費のムダが小さくなるということを意味します。
逆に、変動費は、操業度に応じて上がっていくので、予算許容額は基準操業度に近づくにつれて大きくなっていきます。
このように、二つの直線(一次関数)によって求められる、予定配賦額・予算許容額と、実際発生額の差が、差異分析の結果として現れるわけです。

さいごに

このように、一つ一つを解きほぐしていくと、シュラッター図は、覚えなくても自然と身につくものと考えられます。前回投稿したように、原価計算・工業簿記の分野は、管理会計的な発想に基づいて様々な分析を行います。
そうすると、「原価として把握するべき適切な金額(予定配賦額)」「実際に支払う可能性のある金額(予算許容額)」「実際に支払う金額(実際発生額)」を把握し、その差をそれぞれ別に認識するというのは、極めて重要なように思います。

そして、そのような差は、年間ベースで立てられた計画と、繁閑の度合いや変動費部分の単価の変化の下での月ベースで把握される実績との差によって生まれます。
「なぜこのように計画が立てられているのか」という視点から考えると、意外とすんなりと理解できるものと思います。

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