こんにちは。ヒトツメです。
前回はやる気がなくなったときの対処法について、考えてきましたが、今回から、原価計算・工業簿記の分野に入って、ややこしい論点を解きほぐしていきたいと思います。
一方で、僕自身も、原価計算・工業簿記の分野はまだ1冊目のテキストを読み終えたばかりで、どこがどのようにややこしいのか、あまりまだわかっていません。そこで、今回は、学んでいくうえで前提としておくべきことについてまとめていきたいと思います。
もはや「工業」簿記ではない??
「自分には関係ない」という勘違い
一般に、原価計算・工業簿記というと、製造業において用いられる簿記のことである、といわれています。一方で、日本のGDPに占める製造業の割合は、実に20%程度と、決して多くの割合を占めているわけではありません。
商業簿記が、あらゆる業種において用いられることを考えると、全体の5分の1でしか必要とされないという説明がされるわけですから、「自分にはあまり関係がない」という考えになることは、決して不自然なことではないと思います。
しかしながら、これは大きな勘違いで、後述する通り、学んでいくうちに、様々な業種において活用できる考え方が散りばめられているということがよくわかります。
費用や原価の目的別集計
というのも、主に原価計算で行われているものは、費用や原価を、どういったプロダクトのどういった費用として把握するのが適切かという問いかけに対する答えであることが多いからです。
例えば、原価計算においては、補助部門において係った費用を、それぞれの製造部門に配賦したり、あるいは原価を直接費と間接費に分けて把握したり、ということが行われています。これをすることによって、一定のプロダクトから得た収益が、会社にとって本当にプラスになっているのかどうかということを把握することができます。
このような理解は、サービス業においても必要となるものです。そろそろ年度末になり、来年度の事業計画の策定をし始めているといった方も多くいらっしゃると思いますが、そうした時、「このプロダクトにおいてこれくらいの売上を目標とした場合、どれくらい費用が掛かることになるだろうか」ということを考えることが多いと思います。
こうした時、直接費と間接費を分けたり、変動費と固定費を分けたり、といったことをしなければ、単に実績に対して成長率を掛けるだけでは、適切な計画を策定することはできません。
補助部門における人件費を考える上でも、製造部門(や営業部門)での目標数値を考慮して、複合的な計算をしなければ、適切な数値を求めることはできません。
原価計算の考え方は、このように、「企業外部の利害関係者(ステークホルダー)に企業の財政状態と経営成績を開示すること」を目的とする財務会計上は必ずしも必要ではないものの、「経営者が経営を管理(マネジメント)する際に役立つ情報を提供すること」を目的としている管理会計上は、必ず必要になるものです。
現在の状態を把握するのか将来のために過去を把握するのか
そこで僕は、商業簿記が、企業の今の財務状態や、一定期間の企業成績を把握するための技術であるというのに対して、工業簿記については、将来のために過去の事象を把握するための技術であるという理解をしています。
工業簿記では、過去に起きたことを把握し、それによって将来どのようになるかを予測するために必要な要素を、把握するすることができます。原価や費用が、プロダクト製造のどのような因子に基づいて変動しているのかを把握し、将来それらの因子が変化することによって、原価が費用がどのように変化するのかを理解することができる、ということです。
これらの要素は、単に企業の成績を外部に開示し、企業と企業を比較できるようにするために用いられる商業簿記では把握することができないものです。
あくまで製造業はモデル
想像力の手助け
そんな状況にありながら、なぜ未だに「工業簿記」という名称が用いられ、「製造業において用いられる簿記である」という説明がなされているのかというと、それは、製造業がモデルとしてわかりやすいからです。
製造業の場合、実態がある物が売れ、あるいは売れ残り、そのための部品が今どこにどの程度存在するのかということが非常に明確に想像できます。
むしろ、もともとは製造業のために作られた簿記なので、それらがぴったりと当てはまるようになっています。
勉強をしていくうえで、想像力を働かせて、実際の事象とリンクをさせるということは、非常に重要です。そういった中で、製造業以外のケースをモデルとしたところで、説明がわかりにくくなってしまうし、何より万人に身近だと言えるケースは存在しません。
結局は製造業をモデルとして説明した方が良いという前提に立っているのだと考えられます。
身近な例を同時にイメージする
なので、原価計算・工業簿記を学ぶ上で、最も大切なことは、「自分の会社に置き換えて考えてみる」ということです。サービス業では、原価の大半が人件費ですが、プロダクトにおける売上を拡大させたときに、何がどのように変化し、原価や費用に影響を及ぼすのか、それを原価計算・工業簿記の分野で学ぶ技術によってうまく把握することはできるのか、といった観点で物事をとらえると、頭の体操にもなりますし、何より身に付きやすくなっていきます。
一度学んで「あれ、この場合はどうだろう?」と思ったことが、後から出てきたりすると、記憶に残りやすいですし、学ぶ歓びも感じやすくなります。
さいごに
やはり、前回も投稿した通り、勉強をするうえで大事なのは、そこに歓びを同居させることです。そして、学ぶ歓びを感じるためには、次の三つの要素が必要だと考えます。
- この場合はどうだろう、と自ら疑問を投げかける
- 身近な例を使って物事を把握し、理解する
- 自らの理解の状態を実感する
そういう意味ではやはり、誰かに教えてもらいながら、対話をしながら学ぶ方が、勉強は圧倒的に進みます。対話の中で、疑問の投げかけを手伝ってくれたりする方が、スムーズなのは明白だ、ということです。独学の難しさが仮にここにあるのだとすれば、このように学ぶ分野の前提を知ることは重要です。
最初は手さぐりになりがちですが、1周目で難しければ、2周目、3周目と学んでいく中で、前提を知ることができるように進めていけば、独学でも勉強は進むのだと思います。
コメント