前回までは、労働基準法について解説をしていきました。
労働基準法では、使用者と労働者の特殊な関係性に基づく基本的な考え方や規制について定められています。
もともと、労働安全衛生については、労働基準法に一部基本的な考え方が定められており、その後、業種の特殊性に応じた関連規則が定められていました。
労働安全衛生法は、これらの法令をまとめるような形で成立した法律だとされています。
基本的な規定は二つ
安全衛生管理体制の確立と労働災害防止のための具体的措置
そんな労働安全衛生法では、大きく二つの事柄について規定されています。
それが、安全衛生管理体制の確立と労働災害防止のための具体的措置です。
人的・組織的な対応をきちんと整備しましょう、という話と、実際にその体制を使ってこんな具体的な対応をしましょう、という二段階での規定ということです。
なので、前半では、企業の規模や業種に合わせて、どんな体制を整備しなければならないか、後半では、企業の規模や業種に合わせて、どんな対応をしなければならないか、ということに関する知識が問われることになります。
政省令からの出題
上記の通り、労働安全衛生法では、具体的にどのような場合に対応をしなければならないかを問う問題が数多く問われます。
そして、具体的な内容は、その時代時代によって微妙に変わってくることに備え、法律に直接記載されず、政省令に委任して規定されています。
なので、労働衛生安全法の出題範囲に関する知識は、かなりの部分政省令に定められています。
また、政省令の内容をそのまま問うのではなく、例えば「こういう業種のこういう人数の企業だとどういう対応をしなければならないか」という、具体的な適用関係を問う問題が多く出題されます。
したがって、条文の丸暗記ではなく、やはり具体的な問題に触れながら、どのような出題がなされるのか、しっかりと事前に確認をしておくことが肝要です。
安全衛生管理体制
役職は基幹的な部分
とはいえ、具体的に安全衛生管理体制を組むための役職や組織の名称は法律に記載されています。
まずは一つ一つの役職や組織の関係性を確認したうえで、それぞれがどのような業種や規模の場合に設置しなければならないかを確認すると、効率的に整理して頭に入れることができます。
一つ一つを箇条書きにすると、次の通りです。
- 総括安全衛生管理者(第10条)
技術的事項を管理するものの指揮をし、安全衛生に関する業務の統括管理を行う
自ら巡視等は行わず、あくまで統括管理するのが役割 - 安全管理者(第11条)
安全に関する技術的事項を管理する
巡視義務はあるが頻度の定めはない
選任されたうちの1人は、安全委員会(第17条)もしくは安全衛生委員会(第19条)に参加する必要がある - 衛生管理者(第12条)
衛生に関する技術的事項を管理する
週1回以上の巡視義務を負い、資格試験に合格している必要がある
選任されたうちの1人は、衛生委員会(第18条)もしくは安全衛生委員会(第19条)に参加する必要がある - 安全衛生推進者(第12条の2)
統括安全衛生管理者を設置する規模に至らない規模の企業で、安全衛生に関する業務全般を担う - 作業主任者(第14条)
高圧室内作業など危険を伴う業務を行う企業で労働災害を防止する
資格試験に合格するか技能講習を受ける必要がある
以上が一般的な企業で設置すべき役職です。
続いて、建設現場など、下請け・孫請けが発生する場合に、そういった下請け先企業の安全を管理する必要があるケースにおける、組織的な体制についての規定が続きます。
- 統括安全衛生責任者(第15条)
建設現場で、下請け・孫請け企業の安全管理を含めて、全体を統括する責任者 - 元方安全衛生管理者(第15条の2)
統括安全衛生責任者のみではすべて対応しきれないので、同一企業内での現場管理者的な立ち位置にあたる役職 - 店社安全衛生管理者(第15条の3)
さらに現場ごとの責任者が必要な場合に設置される役職 - 安全衛生責任者(第16条)
統括安全衛生責任者を設置しない事業者(つまり下請けや孫請け企業)における安全衛生の責任者
衛生管理者の設置人数
これらの役職のうち、特に人数に応じた設置について問われるのが、衛生管理者です。
衛生管理者は、常時使用する労働者の数が50人以上だと設置する必要があるとされています。同じく産業医も50人以上だと契約が義務化され、衛生委員会の設置も義務付けられます。
これらは一般に50人の壁などといわれています。
以降、企業規模に応じて、200人以上だと2人、500人以上だと3人、1,000人以上だと4人…と、人数が増えるごとに設置する人数が増えていきます。
特定業種の場合はさらに小さい規模でも多くの衛生管理者を設置する必要性などが出てきます。
細かな規定は過去問+規則
このように概要を頭に入れたうえで、過去問で問われる内容を見ながら、具体的な規則を見て、人数を覚えていくのが、最も効率的な勉強法です。
人数に関する部分はなんとなく覚えていられる人も多く、多くの受験生が高い正答率で正解することが考えられるので、単に問題を解くだけではなく、解きながら条文も見るという反復勉強を続け、正答率を上げていくことが重要です。
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