【簿記1級合格への道】固定資産の解き方

簿記試験

こんにちは。ヒトツメです。
今回も、前回に引き続き、具体的な問題の解き方を見ていきます。そしで、今回取り上げるのは、有価証券と同じく、分離した項目として取り扱われることが多い固定資産についてです。
固定資産というと、減価償却の計算を間違わなければいい、という程度の理解の方もいらっしゃると思いますが、意外と躓きポイントが多いので要注意です。

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固定資産価格の算定

まず最初の躓きポイントとしては、固定資産の価値の算定についてです。多くの問題で、固定資産の取得価格については記載されていることが多いです。記載されていなくても、減価償却類型額から逆算するなどし、価格自体を計算するのはそこまで難しくありません。
ところが、少し厄介なことに、取得価格以外にも固定資産の価値の中に含めなければいけないものがあり、その計算が少しややこしいことが多いです。それが、除去債務です。
一見すると、固定資産の価格の中に資産除去債務を含めるのはおかしいようにも思いますが、例えば日常生活でパソコンなどの電化製品を購入する際にも、リサイクル費用が価格の中に含まれていたりします。その場合、そのリサイクル費用もPCの価格の中に含めるのが一般的だと思いますが、考え方としてはそれと類似しています。

資産除去債務は、除去をしなければいけない時期と割引率から、その債務の現在価値を計算し、それを単純に資産に足すだけです。注意すべきは、期間が経過して、資産除去債務の価値が上がっていったとしても、固定資産の価値は変わらないという点です。期間が経過するにつれ、決算日ごとに債務の現在価値を計算し、差額を利息費用として計上し、資産除去債務の価値も上がっていきますが、固定資産自体の金額は変わらず、元の価格のまま処理をしなければなりません。
もっとも、例外はあり、資産除去債務の見積額が増加した場合、増加が判明した時点での増加分の現在価値を固定資産に足す必要があります。
例えば、資産除去債務が2,000千円増加した場合、増加した時点での除去までの残り期間1年で、割引率が2%だった場合、1,961千円(=2,000千円/1.02)固定資産の価値を増加させなければなりません。

ちなみに、リースの場合でも固定資産の価値の算定は少し面倒です。
リースについてはこちらの記事にまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。

減価償却を行う

次に、固定資産を問題文の指示に従って、減価償却していきます。定額法なら計算は楽ですが、定率法の場合、保証率・改定償却率等を見ながら、慎重に計算をする必要があるので、注意が必要です。といっても、たいていは最後の方はほぼ均等割りと同じような金額になるので、少しでもおかしいと思ったら、読み間違いはしていないかなど注意深く問題文をチェックする必要があります。

ただ、減価償却の場合でも、耐用年数の変更の場合は少しややこしいので注意がいります。単なる状況の変化による耐用年数の変更の場合、誤謬の訂正は必要ないので、残存期間とその時点での資産の価値を考慮して、そこから再度減価償却を行えば問題ありません。
ただ、見積もりの誤りによる場合、誤謬の訂正として、累積的影響額を繰越利益剰余金に足さなければなりません。正しく減価償却していた場合の減価償却累積額と、帳簿上の減価償却累積額を比べて、その差額を繰越利益剰余金に足す(もしくは繰越利益剰余金から引く)ということです。

減損の場合

減価償却まで終われば、帳簿上の固定資産の価値が分かります。最後に、仮にその資産による割引前将来キャッシュフローが、帳簿価格を下回っている場合、減損の処理をしなければなりません。「割引前」ということは、割引率による現在価値への引き直しをしていませんが、引き直しをしないキャッシュフローすらも、帳簿価格を下回っている場合には、もはやその資産には帳簿に記載されているほどの価値はないだろう、という推定に基づくものです。
あくまで、固定資産の帳簿上の価格は、取得価格から減価償却累計額を差し引いたものなので、減損処理といっても、固定資産の価格そのものを本来的な今の価格まで引き下げるわけではなく、減価償却累計額を差し引いた価格を本来的な今の価格まで引き下げるということになります。たいていの問題では、ここでいう「本来的な今の価格」は、「回収可能額」として明記されていることが多いので、問題文からもっともそれらしい金額を選択すれば、正解にたどり着けると思います。

ちなみに、のれんも含んだより大きい単位での減損の場合など、減損価格を分配して処理しなければならない場合もありますが、この辺りは上記の考え方をベースに問題を解き進めていくと、身につくと思います。

さいごに

以上が固定資産の問題を解くときの流れです。圧縮記帳など税効果にも影響する問題も出ますが、基本的な考え方としては、次のような流れになります。

  1. そもそもの資産価値はいくらか
  2. 減価償却による今の価値はいくらか
  3. 帳簿価格を将来回収できる価格まで下げる必要はあるか

こうしてみてみると、有価証券の場合と異なり、固定資産の場合は少し遡って確認しなければならないことが多いように思いますが、一方で、期末における資産価値を判定して、あるべき勘定科目に仕訳けながら処理をする点では、大きく変わるところがないようにも思います。

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