【簿記1級合格への道】総記法をなぜ学ぶのか

簿記試験
  • 単に教科書を見ているだけだと、改めて読み返すと「あれ?なんだっけ?」となるものです。
  • 今回はなんとなく読み進めてしまうポイントの一つである「総記法」について解説をしていきます。
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記憶の定着にはイメージが不可欠!

そこで今回は、簿記1級試験の中でも、よく躓きポイントの一つとなっている「総記法」について考えていきます。

とはいえ、総記法とは?という教科書的な話をしてもあまり意味がないので、日々学習を進める上で大事だと考えるポイントを交えながら、考察をしていきたいと思います。

派遣社員に未払金の説明をした時の話

初めに、話は少し変わりますが、僕が実際に経験した話をしてみたいと思います。

会社で仕事をしていたある日、いつものように請求書が来ました。その請求書の支払い日は、翌月末日だったのですが、その請求書の中身は、その月のサービスの利用料に関するものでした。
そこで、ベテラン派遣社員が、翌月分の支払いの伝票と一緒に未払金の伝票を作り、新人の派遣社員にやり方を説明していました。

こうしたことはよくある光景で、いつものように、「教えてるなぁ」とみていたのですが、そこで新人派遣社員が、「なんでこんな処理をするんですか?」とベテラン派遣社員に質問しました。
ところがかなり説明に苦戦をしまして、僕に助けを求めてきました。

僕も「そうやって言われると説明が難しいなぁ」と思いながら、「今月使ったお金なんだけど、まだ払ってなくて、ただこの費用は今月分として処理しないとおかしなことになるから、それで一時的に未払金の勘定で計上する必要があって…」と、教科書的な話をしました。

はじめは首をかしげていた新人派遣社員が、繰り返し説明するうちに、突然、「あ、クレジットカードみたいな話ですか?」と聞いてきました。

僕は、なるほど、と思いながら、「そうそう!クレジットカードで野菜買ったとき、その野菜の代金はその月の食費だけど、実際の支払いは翌月だったりするじゃない?その時に、その野菜の代金はその月の食費、みたいに処理するために、未払金として一回経理処理しておく必要があるんだよね」とかぶせました。

理解できる=イメージできる=忘れない

上の話は、かなり都合よくいった話ですが、このように、具体的なイメージを伴いながら聞いた話は忘れることが少ないです。

よく、学校などで、「丸暗記するな、理解しろ、そうすれば忘れない」といいますが、これはつまり、理解することで具体的な例や状況をイメージできるようになり、それによって忘れにくくなるからだと思います。

すべての経理処理を、上の例のように都合よく日常の例に置き換えるのは難しいですが、できるだけ自分にとって近しい例を想像できるようになれば、学習は定着しやすいと考えられます。

総記法は在庫管理がざっくり?

そこで、総記法を考えるときに、なぜそんな仕訳をするのか、具体的な例をベースに考えてみたいと思います。

ただ、総記法は実務ではほとんど使われることがない、などともいわれており、実際に総記法が使われる状況を想像するのは少々困難です。

例えば倉庫の中の都度把握が難しい場合

あくまで個人的なイメージですが、総記法は、例えば商品在庫を抱える倉庫の中の都度の把握が難しい場合に有効なのではないかと思います。

経理機能が本社のみにあり、商品在庫を管理する倉庫の人たちは、あくまで在庫切れが発生しないかどうかだけを管理しているだけで、商品在庫の量を常に正確には把握していない場合です。

あるいは、商品を搬出搬入するたびに目減りが発生し、商品在庫の把握が難しい場合にも有効かもしれません。

このような場合、商品在庫がどのような理由で増え、どのような理由で減っているのかの把握が難しいです。

こういった場合に、期首と期末の在庫を数えるのみで、商品販売益を把握することができれば、便利です。
決算整理前仕訳は少し大変ですが、都度倉庫の管理担当者に在庫を数えて報告をさせたり、売上に対する原価を把握する方が大変な場合に有効です。

利益が0の場合からイメージ

このようなイメージを持ったうえで、実際に総記法の考え方を整理するわけですが、総記法の処理については、利益が完全に0の場合をイメージするとイメージがつきやすいです

期首商品に当期仕入を足し、期末商品を差し引けば、当期に使用された商品量が把握できます。仮に利益が完全に0の場合(つまりすべて原価販売した場合)、売った商品の金額と売った商品の原価は同じになるので、当期に使用された商品量はそのまま売った商品と同じになります。

仮に利益が0円であれば、当期仕入+期首商品は、当期売上+期末商品となる。これを売上という観点でとらえ、当期仕入+期首商品と当期売上+期末商品との差額と商品販売益ととらえるのが、総記法の考え方

このような理解を前提とすれば、売った商品と当期に使用された商品の差は、利益になるべきです。つまり、上の図では、黄色い矢印が、期首商品と当期仕入を飛び出ている場合、飛び出ている部分が商品販売益と等しくなります。これが総記法の考え方です。これらをすべて「商品」という勘定科目で整理する、ということになります。

実際の仕訳

このような理解を前提に、実際の仕訳を見ていくと、次のようになります。

原価1万円の商品を現金で仕入れて、そのうち原価8,000円分の商品を現金1万2,000円で売り上げ、当期の商品販売益が4,000円の場合、仕入・売上の際には次のように仕訳けます。

<仕入>

商品 / 10,000

現金 / 10,000

<売上>

現金 / 12,000

商品 / 12,000

この時、期首商品が0の場合、当期の最終在庫は2,000円となるので、決算整理仕訳の際に、次のような仕訳をすることで、商品販売益を把握します。

<決算整理>

商品 / 4,000

商品販売益 / 4,000

実務で発生しない理由

このような仕訳を実務で使用しない理由は、結局、上記のような場合というのが、かなり限定されているからです。

倉庫の管理をしている担当者が正確な在庫量を把握していない場合や、搬出入によって目減りが激しい商品で、商品在庫の把握が難しい場合というのが限られており、総記法をあえて使い、決算整理仕訳の時に大変な思いをするというのは、経済的合理性が低いと考えられる、ということです。

とはいえ、総記法は現に認められた仕訳の方法であり、理解していないと決算書を読み解くのに弊害が出てきてしまいます。そこで、総記法が試験の範囲となっているものと考えられます。

さいごに

総記法は一見するとわかりにくいですが、限られた情報の中でも仕訳ができるという意味では、理論としては優れたものだと思います

決算整理をすることはその期の振り返りをするという意味でも価値があることですし、様々な側面で企業の経済活動をとらえられた方が、より分析力は上がります。ほかの方法との違いを理解するうえでも、総記法の学習は価値があるもののように思います。

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