【簿記1級合格への道】部分時価評価法と全面時価評価法

簿記試験

こんにちは。ヒトツメです。
既に教科書3冊を読み終わり、商業簿記・会計学のところは一通り学習が完了しましたが、中でも一番理解するのに大変だった、部分時価評価法と全部時価評価法の違いについて、今日は考えていきたいと思います。

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全面時価評価法が原則

連結財務諸表に関する会計基準

連結会計の後、大抵のテキストでは、持分法についての解説が続くと思いますが、ここでよく、「連結子会社や非連結子会社の場合は全面時価評価法、関連会社の場合は部分時価評価法で処理をする」といった記載をよく見かけます。その裏には、色々な考慮が含まれているようなのですが、簿記1級のレベルでは、この部分に対する細かな理解までは要求されておらず、したがって、テキストでもあまり解説されないケースが多いです。

しかしながら、単に特定の場合に全面時価評価法や部分時価評価法を使い分けているのではなく、そもそも、制度上、全面時価評価法が原則であるとされています。実際、連結財務諸表に関する会計基準第20項では次のようにされています。

連結貸借対照表の作成にあたっては、支配獲得日において、子会社の資産及び負債のすべてを支配獲得日の時価により評価する方法(全面時価評価法)により評価する

https://www.asb.or.jp/jp/wp-content/uploads/spe-tanki_1-1.pdf

この原則が、非連結子会社の場合にも適用されており、一方で、関連会社の場合には、例外的に、異なる考え方に基づいて、部分時価評価法が用いられています。

考え方の違い

では、具体的にこの二つ、何が違うかというと、子会社の資産および負債に関して、どのように評価するかということが異なります。
全面時価評価法の場合、これらの資産および負債に関して、そのすべてを支配獲得日の時価により評価します。例えば、子会社や関連会社が土地を持っていた場合、帳簿価額と時価が異なる場合、その全額を評価差額として処理し、支配割合や持分比率に応じて、保有株式と相殺する子会社資本を算定します。
その上で、連結会計の場合、取得価額と子会社資本の差額はのれんとして評価することとなります。

これに対して、部分時価評価法では、支配割合や持分比率に応じた部分のみを時価評価します。したがって、子会社や関連会社が保有する土地に関して、帳簿価額と時価が異なっていれば、その差額すべてを評価差額するのではなく、支配割合や持分比率に応じた部分のみ評価差額を計算することになります。
計算上は、帳簿価額と時価の差額に支配割合や持分比率を掛け合わせたものが評価差額となります。

具体的に何が違うのか

具体的に何が違うかというと、例えば、連結親会社が発行株式の80%を保有する場合で、且つ子会社が保有する土地の帳簿価額が3,000万円、時価が3,500万円だとした場合、次のようになります。

  • 全部時価評価法:差額の500万円すべてが評価差額
  • 部分時価評価法:500万円の80%、つまり400万円のみが評価差額

もっとも、のれんの計算の際には、全部時価評価法によったとしても、支配割合に応じて、諸資産額を計算することになるので、最終的にどちらの考え方に基づいたとしても、のれんの額は変わりません。

背景にあるのは経済的単一体説

原則の考え方

上記のように、日本の会計基準上は、全面時価評価法が原則です。このような解釈の背景にあるのは、経済的単一体説、と呼ばれる考え方です。つまり、親会社も子会社も経済的に単一体であると考え、連結財務諸表は親会社株主のみならず企業集団を構成する親会社および子会社のすべての株主のために作成されるべきである、というものです。
連結会計の場合、親会社が子会社を支配している、ということが重要なのではなく、それらが経済的に一つの存在になっている、ということが重要なのであって、支配割合に関係なく、「外からどう見えているか」を常に意識するべきである、という考え方です。

このような理解に立てば、子会社については、その全体を時価で評価するべきとなります。支配割合は関係ありません。
逆に、部分時価評価法のように、自分たちの支配する部分のみ時価評価し、非支配株主持分に相当する部分を無視するというのは、これと対立する、親会社説に立脚した考え方とみるべき、ということです。

関連会社の場合の例外処理の理由

一方で、関連会社の場合、連結財務諸表を作成することはありませんし、持分法親会社の支配は限定的です。その限定的な部分を強調し、有償取得部分だけを資産計上するという考え方に基づいて、部分時価評価法を用いて、評価差額を計算します。
関連会社の場合、複数の会社にとって関連会社になるケースも考えうるため、その場合の持分法親会社すべてが、子会社の超過収益力を資産計上してしまうと、過大評価になってしまうという側面もあるのかもしれません。

まとめると

以上の話をまとめると、次のような表に整理できます。

全部時価評価法経済的単一体説親会社と子会社を一体としてみる・連結会計
・非連結子会社の株式取得時の処理
部分時価評価法親会社説親会社が子会社のどの部分を支配しているかを重視する・関連会社の株式取得時の処理

さいごに

今日は少し概念的な話になってしまいましたが、簿記1級の商業簿記・会計学の範囲を一周してみて感じた、「特にわかりにくいな」という論点は、一通り見てきたと思います。これが二周目三周目となっていくと、逆にさらにわからなくなってきたりするものですし、問題を解いていくとさらにわからない論点が増えていくものですが、次回以降では、工業簿記・原価計算の範囲に突入して、考えていけるよう、テキストを読み進めていきたいと思います。

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