【簿記1級合格への道】連結会計はなぜややこしいと感じるのか

簿記試験

こんにちは。ヒトツメです。
今日は、簿記をやっていると必ず躓く、連結会計について、考えていきたいと思います。
実際、商工会議所の簿記に関するページの中でも、連結会計は個別に特集が組まれていて、受験生を悩ませています。

悪の組織の連結会計~戦闘員A 日商簿記2級に挑む~ 第11話 支配獲得後2期目 ~支配獲得から1年目の流れを繰り返すだけじゃ~ | 商工会議所の検定試験
原作:髙見啓一(日本経済大学准教授)イラスト:高木伝説の勇者(株)による支配獲得日から2年が経った2021年3月31日。(株)ZAIMにおいては2期目の決算を迎えた。子会社となって、割と平…

今日はそんな連結会計が、なぜややこしいと感じるのか、を解きほぐしていきたいと思います。

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連結会計の基本的な考え方

連結会計は、支配従属関係にある2以上の企業からなる企業グループ全体の経営成績、財政状態、キャッシュフローの状態を報告するために用いられる、連結財務諸表を作成することをゴールとして行われるものです。一般に、支配従属関係にあるというためには、おおむね50%超の株式を保有している必要があるといわれており、その会社の基本的事項を決定する権限を持っていると、支配従属関係にある、といわれることとなります。

連結会計の目的は、連結財務諸表、つまり連結損益計算書、連結貸借対照表、連結キャッシュフロー計算書、連結株主資本等変動計算書、といった書類を作成することですが、この時の基本的な考え方をまとめると、次のようになります。

子会社株式は親会社資産

まず第一に、子会社の株式は、親会社の資産ということです。

これは連結会計の時によく書かれる図ですが、親会社の視点で連結子会社を見たとき、子会社株式を保有する意味は、究極的には、子会社の純資産(+α)です。負債があるからと言って子会社株式の価値が上がるわけではなく、株式の価格も、基本的には子会社の純資産(+α)でなければいけません。
そのうえで、超過している部分は、「のれん」として処理されるというのが、大原則です。

内部取引などに基づく修正仕訳

ただ、単純に親会社と子会社のそれぞれの財務諸表を合体させるだけでは終わらないというのが、連結会計の一つややこしいところです。例えば、親会社から子会社に商品を売り、その際に利益を計上していれば、連結グループ企業の外から見れば、何の利益も発生させていないため、修正が必要になります。

あるいは、親会社から子会社に貸し付けを行い、それに貸倒引当金を設定していたとしても、これも外から見れば、内部で貸し借りをしているだけなので、連結財務諸表上は表示されてはおかしくなってしまいます。

このように、外から見たときにどのように見えるか、という視点から、実際に親会社・子会社それぞれの財務諸表に表示されているものの中から、連結財務諸表上は表示されるべきではないものをあぶりだし、見えないようにするという処理が必要になります。
ただこれは、パターンが決まっていますし、株主の視点から見れば、ある程度納得できるものも多いので、それだけでややこしくなる、という感じはしません。

子会社の価値が変わるということ

たいていのテキストでは、連結財務諸表は、なんとなくこれらの二つの考えを踏まえて書かれているように思います。ただ、ここで非常に重要な視点がもう一つあります。それは、子会社の価値が変わる、ということです。
子会社が利益剰余金を出した場合もそうですし、配当を行って価値が株主に移転した場合もそうですが、子会社の価値は毎期異なってきます。これが連結会計を複雑にしている最大の要因だと思います。

というのも、損益計算書や貸借対照表では、償却という概念はあるものの、モノの価値そのものが変わることはあまり想定されていません。あくまで償却は、一括購入した固定資産などを、購入した期だけに計上せず、少しずつ計上させることで、企業活動の実態を明確にするための技術という観点が強いように思います。
会社の価値の出入りについては、株主資本等変動計算書によって表現されるのが普通ですが、これは連結会計以外ではあまり出番がなく、新たな出資を受けた場合等、やや特殊なケースのみに限られています。初学者向けのテキストでは、損益計算書や貸借対照表で解説が終了しているのが大半ですが、そもそも株主資本等変動計算書の概念を学ばない状態で、どのような場合に連結株主資本等変動計算書に表示させるべきかということを学んでも、いまひとつ理解が進みません。

株主資本等変動計算書とは何か

一会計期間における純資産の変動額

株主資本等変動計算書とは、貸借対照表に表記されている、「純資産の部」の一会計期間における変動額をあらわすものです。貸借対照表の「純資産の部」の項目を並べ、それぞれの前期末残高、当期変動額、変動事由、当期末残高を記載する、というのが一般的です。

逆に、連結会計の場合以外には、単純に変動したことを示すだけなので、そこまで難しくなく、解説に多くの紙幅をとるテキストはあまり多くないように思います。

連結会計では開始仕訳で登場

これが、連結会計では、開始仕訳の際に必ず登場します。開始仕訳では、子会社の支配を開始して以降の仕訳を再度行うとされており、その際、純資産項目については、資本金当期首残高利益剰余金当期首残高といった項目を用いて表記されます。なぜこれらの項目が出てくるかというと、個々の損益計算書や貸借対照表上は、子会社の株式や純資産の変動が表現されていないため、連結株主資本等変動計算書を用いて、これを表現する必要があるからです。
上記の、子会社の価値が変わるという部分は、あまり見慣れない株主資本等変動計算書でないと表現できず、損益計算書や貸借対照表しかほとんど見ることがなかった状態で見ると、「ナニコレ」となって、理解がしにくくなるのだと思います。

もちろん、開始仕訳では、個々の財務諸表には表現されていない前の期までの連結修正仕訳を再び行う必要がありますが、なぜ純資産の項目だけ、勘定科目が変わるのか、というのは、こういったカラクリによるものです。

さいごに

こうした、ややこしい項目を見て何より強く思うのは、様々な表現で繰り返し同じ項目を学ぶことの重要性です。基本的に一般的なテキストには、「記載漏れ」というのはなく、わかった状態で読むと記載に過不足はなく読めるものです。一方で、読み手側の「読み漏れ」というのは、必ず発生するものです。これは、同じ教科書を何度読んでも、あまり改善できる部分ではありません。
理解している人の表現を、色々と読むことで、様々な視点を得、そこで始めて理解できるようになるものだと思います。

連結会計に関しては、冒頭でも記載している通り、商工会議所が簿記2級向けに連載記事を載せています。1級の知識をすべてカバーしているわけではなく、これだけで連結会計の知識はすべて身につくわけではないですが、読む分には無料ですし、一読することをお薦めします。

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