【簿記1級合格への道】原価計算形態のあれこれを考える

簿記試験

こんにちは。ヒトツメです。
ついに簿記の教科書6冊すべて読み終わり、一通り知識がついたところです。

そこで、今日は、原価計算の基本のところに立ち返って、○○原価計算と呼ばれる、原価計算形態のあれこれについて考えていきたいと思います。よく似た用語ですが、それぞれかなり意味が違うので、それぞれどういう意味で使われているのかを正確に理解しておくことで、原価計算全体について、理解ができるようになると考えられます。

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実際原価計算と標準原価計算

原価計算基準によれば、原価計算は、実際原価計算と標準原価計算に大別することができるとされています。

原価計算制度において計算される原価の種類およびこれと財務会計機構との結びつきは、単一ではないが、しかし原価計算制度を大別して実際原価計算制度と標準原価計算制度とに分類することができる。
実際原価計算制度は、製品の実際原価を計算し、これを財務会計の主要帳簿に組み入れ、製品原価の計算と財務会計とが、実際原価をもって有機的に結合する原価計算制度である。原価管理上必要ある場合には、実際原価計算制度においても必要な原価の標準を勘定組織のわく外において設定し、これと実際との差異を分析し、報告することがある。
標準原価計算制度は、製品の標準原価を計算し、これを財務会計の主要帳簿に組み入れ、製品原価の計算と財務会計とが、標準原価をもって有機的に結合する原価計算制度である。標準原価計算制度は、必要な計算段階において実際原価を計算し、これと標準との差異を分析し、報告する計算体系である。

これらの違いは、統計的に計算された標準原価というものを用いて、原価を計算するか、実際にかかった原価を用いて原価を計算するか、という違いです。
しかしながら、そもそも原価計算は、次のような五つの目的のために実施されるものとされています。

  1. 財務諸表に表示するための原価集計のため
  2. 価格計算のために必要な資料を提供するため
  3. 経営管理者が原価管理をするため
  4. 予算編成や予算統制を行うため
  5. 経営の基本計画を策定するため

このような理解に基づけば、「実際原価計算精度」といっても、単に実際にかかった原価を計算するだけでは足りず、項目ごとに原価の標準を設定し、実際の差異を分析する必要がある場合があるということになります。
あくまで、これら二つの制度は、原価計算の当初より、標準原価を統計的に設定しておくかどうかという違いであり、原価差異の報告については、実際原価計算の場合にも実施する場合があるということには注意が必要です。

直接原価計算に関する勘違い

また、よく似た名称の原価計算制度として、直接原価計算があります。直接原価計算に関しては、簿記や財務会計の教科書で、「製品単位当たりの原価は固定費を含まないから、財務諸表の作成にあたって採用できる適切な取得原価とは認められない」などと記載がなされることがあります。
この記載自体は間違いではないのですが、個人的には、誤解を生みやすい表現であると思っています。というのも、この記載だけ見ると、直接原価計算は、認められてない制度であり、使えないものだ、という認識を生む可能性があるからです。

原価計算の目的は、上記の通り五つありますが、そのうち、4.や5.の目的を考慮した時に、製造量や販売量がどの程度になった場合、つまりトップラインがどの程度になった場合、その時の費用がどの程度になるのか、つまりボトムラインがどの程度になるのか、ということを考える上で、変動費部分の原価を計算するのは、非常に重要です。
実際、原価計算基準の30において、次のように定められています。

総合原価計算において、必要ある場合には、一期間における製造費用のうち、変動直接費および変動間接費のみを部門に集計して部門費を計算し、これに期首仕掛品を加えて完成品と期末仕掛品とにあん分して製品の直接原価を計算し、固定費を製品に集計しないことができる。
この場合、会計年度末においては、当該会計期間に発生した固定費額は、これを期末の仕掛品および製品と当年度の売上品とに配賦する。

財務諸表に記載する際に、変動費のみを原価とすることは認められていませんが、期中の原価計算においては、変動費のみを原価とし、管理することが認められているということになります。原価計算の問題では、この部分を問われることがあるので、直接原価計算もしっかりと理解しておく必要があります。

戦略的原価計算

原価計算制度とは別軸の考え方

最後に、たまに戦略的原価計算という考え方が出てきたりすることがあります。ただ、これについては、以上で説明したような原価計算制度と並列で理解するべきではありません。
というのも、伝統的な原価計算制度は、それぞれ、標準原価を使ってよいか、固定費は原価に含めずに管理してよいか、といった、Yes/Noで答えられる基準によって明確に定められています。

しかしながら、戦略的原価計算は、「これが戦略的原価計算」というものがあるわけではなく、事業の実態を考えたときに、原価をどのように把握するとより分かりやすく的確か、ということをしっかりと考えましょうという考え方の話に近いです。

活動基準原価計算や原価企画

例えば、活動基準原価計算と呼ばれるものは、製造間接費を細分化し、項目ごとにどのような配賦基準によって配賦するのがより実態を的確に表しているかを考えて行うというものです。
あるいは、原価企画や原価統制と呼ばれるものは、予め定められた収益目標に基づいて、原価を下げるための方策を積み上げていくという作業であって、原価計算の基準を定めるようなものではありません。

結局、戦略的原価計算とは、こういった考え方の束をまとめて「現代的な」原価計算の手法をまとめた学習上の項目にすぎず、原価計算の方法として何か確立したものではないわけです。

これは僕の個人的な意見ですが、「配賦」というのは、一種の「擬制」です。伝統的原価計算基準の場合は特に、「このような基準に基づいて計算すれば、実態にある程度近くなり、且つ計算しやすい」というある程度の切り捨ての上に成り立っています。
近年、グローバル化や製品の多様化によって、そのような擬制が実態に合わなくなってきているため、様々な考え方が出てきており、それを総称して、戦略的原価計算という名称がつけられているにすぎません。

さいごに

結局、○○原価計算が良いといった確実なものはなく、どの範囲で切り捨てをするか、その切り捨ては実態を推し量る上で適切か、ということをしっかりと意識することが重要だということです。それは、標準原価計算でも実際原価計算でも、変わるところはありません。配賦を行う以上、何らかの切り捨ては発生しますし、本当の意味で原価を正確に把握するというのは、たぶん不可能です。
その時々の状況に応じて、何が実態と近いと考えるのか、という視点が重要なように思います。

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