やる気≠モチベーション
「やる気」とは幻想
モチベーションという話をするとき、よく、「部下のやる気を上げるには?」「やる気を上げて効率アップ」といった解説を見ます。
ただ、厳密には、モチベーションとやる気は大きく異なります。
では何か。ズバリ、「やる気」とは人間が作り出した幻想という点で、モチベーションと大きく異なります。
ものを動かそうとするとき、一般に動摩擦係数より静止摩擦係数の方が大きいように、人間は状況を変えることを大きく嫌がります。
動き続けている状態で急に止まったり、止まっている状態から動き出そうとするとき、大きなストレスがかかります。
その時の、ある種の「億劫さ」を「やる気が出ない」という表現で言い換えているに過ぎないといわれています。
モチベーションは動機
これに対して、モチベーションとは、何かを成し遂げようとする「動機」を指します。
例えば仕事をするときの動機は、それに対する対価としての給与だったり、誰かからの賞賛、あるいは仕事自体が楽しいといったことがあげられます。
モチベーションとは、このように、何か行動を起こすときの理由や動機付けを意味し、やる気とは区別して考えるべきものです。
モチベーションコントロールの考え方
第一歩は「理由探し」
では、モチベーションコントロールのために何をするべきか。
答えはシンプルで、「働く理由を探してあげる」ということです。
「マズローの欲求5段階説」というものがありますが、それになぞらえて言えば、働く理由は次の5つに分類できます。
- 生きていくためには働かないといけないから(生理的欲求)
- 働いて稼いだ方が安定した生活を送れるから(安全欲求)
- 周囲が働いた方がいいと考えているから(社会的欲求)
- 誰かに感謝されたり賞賛されたいから(承認欲求)
- 働くことによってあるべき自分になりたいから(自己実現欲求)
すでに社会に出て働いている時点で、三つ目の社会的欲求はクリアしているケースがほとんどです。これが欠如している場合、いわゆる引きこもりになるケースが多いです。
自分や周囲の人の現在の働く理由を見つけて、それより一段階高いところに欲求をもバージョンアップさせるとより高いモチベーションを維持しやすくなります。
「金銭的対価」に走るのはNG
この時注意すべきなのは、「金銭的対価」に走ることです。
より低い欲求ほど、満たされると人間は麻痺してしまい、それがない状態を嫌うことになります。
すでに第三段階の社会的欲求として働いている以上、それより下の段階に下げて、例えば「これを頑張れば給与を高くしてあげる」といった形でモチベーションを上げるのはNGです。
欲求レベルを下げることで、それがなくなった時のデモチベーションの度合いを上げてしまうことになります。
金銭的対価を引き合いに出す場合でも、「今の給与のために働く」ということではなく、「今働いていることにより評価が上がる(承認欲求)。その結果として給与も上がる」という具合に、欲求レベルを下げないようにしましょう。
結局は「楽しいから」が一番
一人の人間が一般に抱えることができるレベルの規模(数十人程度)であれば、目指すべきは、「部活」のような状態です。
それ自体が楽しく、且つ人間関係もこじれておらず、適度な距離感で全体的に仲がいいという状態は、安全欲求なども満たした状態で、相互に承認欲求を満たすことができ、モチベーションが上がりすいです。
中には、スキルアップなど自己実現のためにさらに成果を上げようとする人もいて、それが全体への刺激になったりもします。
モチベーションの正体を正確に把握して、より良い組織づくりを目指していきましょう。
コメント