こんにちは。ヒトツメです。
既にこのブログの記事も10記事を超えて、少しずつ慣れてきました。今日は趣向を変えて、最近観た映画の話を投稿しようと思います。
ただ、最新の話題の映画の話には到底ついていけないので、最新の映画ではなく、また、あまりメジャーどころではない映画の話をしてみたいと思います。
タイ制作のクライム映画
今回お話しする映画は、タイで制作された『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』という、2017年制作(日本の公開は2018年9月)の映画です。
授業料免除の特待生として高校に入学した、貧しい家庭の生まれながらも頭脳明晰な少女リンが、女優志望の親友グレースのために試験でカンニングをするという話です。最初は、「成績で一定のスコアを取れないと舞台に出られない」と嘆くグレースのために勉強を教えていたのですが、それでも試験の時に問題が解けず、あまりに困っているグレースを見かねてカンニングをさせてあげます。ついにはどんどん話が大きくなり、アメリカの大学を受ける資格を得るための試験である、STICという試験で、チームを組んで不正を働きます。
カンニング自体は、日本でも余程の悪質性がない限り犯罪にはならず、刑務所に送られることは極めてまれですが、タイでも同じような扱いのようで、いわゆるクライム・アクション映画で見られるような、警察との駆け引き、といったド派手な話ではありません。
しかしながら、不正を働くときのスリルや背徳感がしっかりと画面から伝わってきて、手に汗握る展開が続きます。主演のチュティモン・ジョンジャルーンスックジンは、この映画が初主演でしたが、いかにバレないように不正を働くかを考え、冷静に準備する役どころを、見事に演じきったように思います。
タイ版の『オーシャンズ11』?
この映画に対しては、タイ版の『オーシャンズ11』や、『ミッション・インポッシブル』になぞらえて、「カンニング・インポッシブル」と評価されているようですが、個人的には少し違う視点でとらえています。
というのも、『オーシャンズ11』や『ミッション・インポッシブル』では、実際の犯罪行為やアクション行為に関して、主人公たちはある種の歓びや使命感をその原動力としています。しかしながら、この映画のリンについてみると、最初こそグレースのために不正を働くものの、その後不正を働き続けるのは、親が学校に賄賂を贈っているのを知るからです。リンは貧しい家庭で生まれながらも、懸命に努力して優秀な成績を得て、それを基に特待生として入学する権利を得ますが、そんなリンに黙って、父親は学校の維持費と称して賄賂を贈ります。自分の父親だけではなく、成績が良くなく、裕福な家庭については、より多くの賄賂を支払っていることを知り、そんな不正にまみれた学校や親に対する嫌悪感を原動力として、テストで不正を働きます。
なので、学校の先生を出し抜くことには、それ自体にある種の歓びを感じながらも、最後のSTICの試験では、少しずつ気持ちに揺らぎが生じていきます。
そういう意味では、社会にあらがう子どもたちの青春映画として観ることができますし、また、リンと父親が、すれ違いながらも最後は分かり合える、そんな親子愛の物語としてとらえることもできます。
不正を問いただされて
この映画で、中でも印象的なシーンは、学校に不正が部分的にばれて、「なぜそんなことをしたのか」と校長先生からリンが問いただされるシーンです。その時リンは、咄嗟に何のために不正を働いたか答えられなくなります。解答を教えることで周囲の生徒から得られるお金のためなのか、女優を目指しながらも成績が足りないグレースのためなのか、周囲からの期待からなのか、何のために不正を働いたのか、問い詰められてわからなくなります。
この時の主演のチュティモンの表情や空気感がなんともいえず、強く惹きつけられます。
映画全体の空気感や、実際に不正を働くときのハラハラドキドキした展開も、観る人を惹きつけ、非常に完成度の高い作品になっているように思いました。
機会があれば是非見ていただきたい、非常におススメの映画です。
コメント