【趣味のお話】映画:タクシー運転手~約束は海を越えて~

映画

こんにちは。ヒトツメです。

今日ご紹介する映画は、韓国の「タクシー運転手~約束は海を越えて~」という映画です。韓国の映画といえば、2019年アカデミー作品賞を受賞した「パラサイト~半地下の家族~」が有名ですが、「パラサイト」で父親役を演じたソン・ガンホが、この映画の主人公を演じています。

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前半はコメディタッチの明るい映画

タクシー運転手が主人公の映画といえば、ロバート・デ・ニーロ主演の「タクシードライバー」が思い出されますが、この映画は、名作と呼び声高いマーティン・スコセッシの映画とは異なり、テーマは非常に具体的です。「現代人特有の虚無感」といった抽象的なものを描いた映画ではなく、1980年を舞台に、貧しくも明るく過ごすタクシー運転手が、困難な問題に立ち向かう姿を描いたドラマ映画です。

1980年の韓国というと、その前年に朴正煕大統領が暗殺され、15年以上続いた軍事独裁政権の終わりが見えてきたような時期で、ソウルを中心に、近代化の波が訪れ、少しずつ国民の心が開放的になってきていた時期だといわれています。
そんなソウルで、走行距離60万キロのボロボロのタクシーを運転している主人公のマンソプは、妻に先立たれて父子家庭ながら、友人から家を借り、貧しいながらも必死に生きています。

一方で、当時の韓国はまだ、朴正煕のあと政権を握った全斗煥が、同じ轍を踏むまいと野党や反対勢力を粛清・逮捕することで軍事政権を維持していた時代でした。反政府運動が盛んな時期でもあり、マンソプは、そんな反政府運動を、斜め上から眺めて、「若いうちは苦労をするべきだ」とあきれながら見ています。
前半は、そんなマンソプが周囲を出し抜き、美味しい話にありつこうとする様を描いた、コメディタッチの明るい映画となっています。

光州事件

ところが、後半になるにつれて、全斗煥政権のように、その裏側にある事実が明らかになっていき、徐々に物語はシリアスな展開を迎えていきます。
マンソプが周囲を出し抜いてありつこうとした「美味しい話」というのが、ドイツ人記者を光州まで連れていき、ソウルまで戻ってくれば大金をもらえるという話だったのですが、当時の光州は、全斗煥政権によって逮捕された野党の指導者金大中の支持基盤で、反政府運動が最も盛んな地域でした。マンソプは、光州で、政府に反抗する市民と、そんな市民に銃を向ける軍部の有様を目の当たりにし、様々な想いを巡らせていきます。
軍部の被害者には無抵抗な人たちも含まれていて、自分が知らなかった本当の母国の姿を知り、考えが変わっていきます。

この映画の舞台は先述の通り1980年ですが、マンソプは、いまの現代人を象徴しているように思います。政治に対してどこか無関心で、デモなどをどこか引いた眼で見ながら、自分の今の生活に精一杯です。これに対して、光州の人たちは、国を良くしようと必死になって戦う、少し昔の人たちを象徴しているような描かれ方がしています。
そんな「昔の人たち」の争いによって、未来ある若者たちが命を落としていく姿を見て、マンソプは今の生活の根底にある物に気が付き、行動を起こしていきます。
2時間超と、少々長いですが、そんな対比が見事に描かれており、間延びなどもすることなく、非常に濃密な映画です。

さいごに

韓国の映画やドラマというと、少し前までは、コントのようなセットと、どことなく軽薄なBGMというイメージが強かったですが、最近の韓国の映画やドラマは、非常に本格的で、この映画も、派手さはないものの、カメラワークが秀逸で、物語もテンポよく進んでいきます。
マンソプを演じるソン・ガンホも、立っているだけでその時の感情が伝わってきて、非常に素晴らしい演技力を見せています。
隣の国で、立った40年ほど前に起こった事実を知る上でも、一見の価値のある映画だと思います。

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