こんにちは。ヒトツメです。
原価計算の勉強も進み、早くも教科書の5冊目(工業簿記・原価計算の2冊目)も読み終えましたが、今日は、仕損品が出た場合の度外視法と非度外視法についてのお話です。原価計算では、対になる「~法」がいくつかあり、ややこしいと感じますが、今日はその一つについて取り上げます。
不良品のエスニックジョーク
日本は、世界でも品質レベルが高いことが知られており、時に過剰品質であるなどと揶揄されることもありますが、そんな日本の状況をよく説明した「不良品」という有名なエスニックジョークがあります。
あるアメリカの自動車会社が、ロシアと日本の部品会社に次のような仕事の発注をした。
「不良品は1,000個につき一つとすること」
数日後、ロシアの工場からメールが届いた。
「不良品を1,000個に一つというのは、大変困難な条件です。期日にどうしても間に合いません。納期の延期をお願いします」
数日後、日本の工場からもメールが届いた。それにはこう書かれていた。
「納期に向けて作業は順調に進んでおります。ただ、不良品の設計図が届いておりません。早急に送付してください」
この例からもわかる通り、日本人は、「不良品」つまり簿記でいうところの仕損品を、特殊なものであると捉える傾向にあります。
しかしながら、簿記はもともと欧米で発達した技術で、世界中の人が全員、日本人と同じように考えているわけではなく、この例で出てくるロシア人のように、仕損品を、通常発生するべきものと捉えるという傾向にあるように思います。
このジョークは少し古いものですし、グローバル化が進んで、日本でも仕損品の発生が通常のものであると捉えられるようになってきていますが、それでもなお、仕損品を特殊なものと考える傾向にあるように思います。
その仕損品は良品のための犠牲か
さて、少し前置きが長くなってしまいましたが、今回説明する度外視法と非度外視法は、このような、仕損品の発生を通常のことと捉えるか特殊なことと捉えるか、という発想の違いによるもののように考えています。
そもそも仕損品には、正常仕損と異常仕損があり、火事などの異例事態によって発生する仕損は異常仕損と捉えられることとなりますが、そういった異例事態が発生しなくてもなお発生する正常仕損についても、通常のことと捉えるか特殊なことと捉えるかによって、経理処理が異なるということです。
度外視法は、正常仕損を通常のものと捉える捉え方です。基本的な物理法則にしたがえば、200kgの製品を作るために200kgの材料が必要ですが、目減りをする場合もあり、実際には210kg必要だったりします。この時に生じる10kgの差を、良品のための犠牲と捉え、全て原価の中に組み込んでしまう、ということです。
たとえそれが、いわゆる減損の場合であろうと、失敗ができてしまう仕損の場合であろうと、度外視法では原価に組み込むということになります。
これに対して、正常仕損であっても、それ自体特殊なことだと捉える考え方に立てば、仕損・減損による10kgは、別で計算して、その上で良品や仕掛品に配賦するべきという理解になります。これが非度外視法です。
ここで注意するべきは、結局、原価計算の結果は、度外視法か非度外視法か、どちらかによることによって変わるのではなく、どちらによって立つとしても、完成品にのみ配賦するのか、仕掛品も含めて両者負担とするかによって変わるという点です。
どちらかの考えを取ったからと言って、直接計算結果が変わるということはありません。
第1法と第2法
しかしながら、このような理解の違いを基に、標準原価計算を実施する場合は、やや異なります。
標準原価計算における仕損品発生時の処理については、次の二つの方法がありますが、第1法は度外視法に、第2法は非度外視法に依拠した考え方であるとされています。
- 第1法:原価要素別の標準消費量を正常仕損・減損率の分だけ増やす方法
- 第2法:正常仕損・減損費を含まない正味標準原価に正常仕損・減損費を特別費として加算する方法
この時、第2法によった場合、異常仕損と原価標準差異は分けて把握されることになりますが、第1法によった場合、異常仕損は原価標準差異としてしか把握されないという違いが生じます。
というのも、そもそも標準原価計算は、統計的に導き出された標準的な原価をベースとして、能率管理を目的に行われるものです。度外視法の考え方によった場合、仕損はすべて通常のものとして把握され、原価に含まれるようになるわけですから、そのような考え方によって能率管理をした場合、異常仕損であっても、それは原価差異として把握されることになる、というわけです。
さいごに
以前も記載した通り、原価計算は管理会計を目的とする技術です。結局そこには、より多くの製品をより安く作るとした場合、何をどのように把握したらより良い結果をもたらすかという経営判断が常に介在し続けます。
どちらの考え方によるからより良いといった判断はなく、様々な手法を駆使できるよう、常に利用する場面を意識しながら、勉強してく必要があります。
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