【簿記1級合格への道】税効果会計とは一体何なのか

簿記試験

こんにちは。ヒトツメです。
今日は、教科書の解説を読むだけではもはやチンプンカンプンになってしまう、税効果会計について、まとめてみたいと思います。
税効果会計は、問題を解き進めていかないとほぼ理解はできないので、今日は過去問にも触れながら考えていきたいと思います。

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定義から考える

税効果会計に関しては、「税効果会計に係る会計基準」というものが存在し、その中で次のように、はっきりと定義されています。

税効果会計は、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合において、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(以下「法人税等」という。)の額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期純利益法人税等合理的に対応させることを目的とする手続である。

税効果会計に係る会計基準 第一 税効果会計の目的

まず、大前提として、企業会計上の資産または負債と、課税所得計算上の資産または負債には、相違がある場合があります。税効果会計は、そのことを、計算書類上に的確に記載をすることによって、「なぜ当期純利益がその額になるのか」という辻褄を合わせることを目的とした、手続であるということです。
例えば、税引前当期純利益が、3,000千円だとして、税率が30%だったとします。この時、税引後の当期純利益は、2,100千円とならなければなりません。ただ、企業会計上の資産または負債と、課税所得計算上の資産または負債の差によって、例えば、課税所得が3,100千円となったとします。この時、法人税等の額は、930千円となり、税引後の当期純利益が、2,070千円となってしまいます。この時の差額の30千円を、調整額として把握しておくことで、その期の当期純利益を2,100千円としておくというのが、税効果会計の基本的な考え方です。

税引前当期純利益と、課税所得には差が出ることがある。課税所得の方が大きい場合、税引前純利益から法人税等を引いた額の方が、税引前純利益に税率をかけた金額より低くなってしまう。この部分を調整額として把握する。

理解しにくい用語

繰延税金資産と繰延税金負債

このように、税引前当期純利益と課税所得に差がある場合、その差額に税率を掛けたものが、法人税等調整額となります。
ここでややこしいのが、その法人税等調整額と表裏一体となっている概念として出てくるのが、繰延税金資産と繰延税金負債です。なぜややこしいかというと、例えば税引前当期純利益より課税所得の方が大きく、法人税等調整額をマイナスで処理する場合、対応するのは、繰延税金資産となるからです。つまり、本来の純利益よりも多く税金を支払った場合、繰延税金資産が計上されることになります。

ただこれは、前払費用が資産として計上されるというのと同じ理由です。企業会計上の計算では支払わなくてもいい税金を先に支払っている状態なので、これは将来債権の債権者に対して、お金を貸し付けている状態と類似しています。なので、あくまでこれは「資産」として把握されるわけです。

将来減算一時差異と将来加算一時差異

また、繰延税金資産を計上する場合、それに対応する一時差異(企業会計上の計算と課税所得計算上の計算の差異)は、将来減算一時差異と呼ばれます。将来の課税所得を減算し、将来における税金の額を減少させる効果を持つものなので、このような名称で呼ばれます。
これに対して、将来の課税所得を加算し、将来における税金の額を増加させる効果を持つものを、将来加算一時差異といいます。

第150回簿記1級試験会計学過去問

さて、以上を踏まえて、第150回簿記1級試験の会計学の過去問の問題2の状況4を見ていきたいと思います。

当期末において将来減算一時差異が33,000千円、税務上の繰越欠損金の残額が20,000千円あった。見積可能な期間における将来の課税所得は45,000千円と見積もられた。なお、前期末における繰延税金資産は17,500千円、当期における実効税率は3.5%、将来の見積可能な期間における実効税率は30%であった。前期末及び当期末において、評価・換算差額等はなかった。

ここで、「税務上の繰越欠損金」というのが出てきていますが、要は、「過去損失を出しているので将来利益が出てもその分は税金を払わなくていいですよ」というルールに基づくもので、将来減算一時差異と同じように扱われるものです。税効果会計に係る会計基準でも、下記のように定められています。

将来の課税所得と相殺可能な繰越欠損金等については、一時差異と同様に取り扱うものとする(以下一時差異及び繰越欠損金等を総称して「一時差異等」という。)。

税効果会計に係る会計基準 第二 税効果会計に係る会計基準 一 4

以上より、この問題の状況を整理すると、次のようになります。

  1. 将来的に、45,000千円の課税所得が出ることが見込まれており、その時の税率から考えて、13,500千円の税金を支払わなければならないことが見込まれている
  2. しかしながら、一時差異等が合計で53,000千円存在するため、それより低い課税所得45,000千円に対して支払った税金はすべて繰延税金資産として計上されることとなる
  3. すでに前期末時点で、余分に17,500千円の税金を支払っている

したがって、当期の繰延税金資産の額を13,500千円にするため、法人税等調整額を、17,500千円との差額である4,000千円として、損益計算書上に記載することになります。

ちなみに、この問題は、繰延税金資産の処理に関して正しい記述の選択もしなければならないとされていますが、いずれも、税効果会計に係る会計基準にそのまま説明がされているので、会計基準に一通り目を通しておくと、あっさりと解けてしまいます。

  • 当期末における繰延税金資産は、見積可能な期間における将来の課税所得によって回収可能な金額に限られる
    → 〇(第二 税効果会計に係る会計基準 二 1)
  • 当期末における繰延税金資産は、当期における実効税率によって算定される
    → ×(第二 税効果会計に係る会計基準 二 2)回収が見込まれる期の税率
  • 当期末における繰延税金資産は、税務上の繰越欠損金に係るものを含まない
    → ×(第二 税効果会計に係る会計基準 一 4
  • 当期末における繰延税金資産は、税率の変更に伴って変動するが、税率の変動による繰延税金資産の変動額は特別損益として表示しなければならない
  • → ×(第二 税効果会計に係る会計基準 注6・7)

さいごに

以上、税効果会計に関する基本的なところを見ていきました。
このような考え方をベースにして、たとえば圧縮記帳の積立金方式の場合の処理や、退職給付引当金の損金算入限度超過額の場合の処理についても、同じように考えていくことになります。基本を理解しておくと、教科書を読み進めたときや問題の解説を読むときにスムーズに進むと思います。

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