何が書いてあるか?
ほとんどが無駄な話
この本は、書籍の中でも書かれている通り、98%くらいは無駄な文章で構成されています。
そのうえ、あろうことか、文章を書いて世の中に影響を及ぼそうと思った場合、そこに何が書いてある架よりも、誰がその文章を書いたかの方がずっと重要だとさえ書いてあります。
例として、学者ばりに色々と調べて書いた、含蓄のあるローマ史に関する何万字の文章より、宇多田ヒカルが書いたとんかつの話の方が読まれることになるという話が取り上げられています。
それでいて、決して2%の文章量では、この本の面白さは伝わらないというところに、この本のすごさがあるように思います。
また、文章を書くのが誰なのかという問題以上に、どうやってどんな文章を書くかという問題の方がずっと重要だということについて述べられています。
筆者が書いていて面白いと思っている話
というのも、この本に書いてある話は、筆者が実際に「こういう文章を読みたい」と思って書いているからです。
就職面接の際の自分の成功例を上げていますが、単にひけらかすようなためではなく、その本質を紐解き、人を惹きつけるために必要な本質を抽出して記載しています。
実際、「人を惹きつけるために必要な本質」について読みたいと思い、それは何かを考え、理路整然と書いてあったら読みたいと思い、その視座に立って実際に書いているから、読んでいて面白いというのが、この本の面白さだと思います。
書籍の中でも、夏目漱石の恋愛観の話が出てきますが、ちょうど、モテもしない夏目漱石が、傍目八目な目線で理想の恋愛について小説にまとめているように、タイトル通り自分の読みたいものを書いたのが、この本ということです。
役に立つのか?
役には立たない
では、田中泰延氏が、田中泰延氏のために書いたこの書籍、役に立つかといわれると、「役に立たない」というのが答えだと思います。
それは、巷にあるビジネスハック的な目線で、小手先の技術が身につくかという観点で、技術は身につくことはなく、役に立たないという意味です。
先に書いた通り、大半がくだらない無駄な話ですし(ウィットに富んだ文章と言えば、そうかもしれませんが)、小手先の技術については何ら書かれていません。
強いて言うなら、「起承転結って便利だよね」くらいの話しか書いてないです。
それでも役に立つ
ただ、それでも、この本は非常に含蓄に富んだ、極めて有用性の高い、一見の価値のある書籍だと思います。
本質を取り出せば、定義に立ち返ることの重要性や、文章を構成するときの基本的なお作法、調べ物をするときの手順など、極めて重要でありながら、多くの人ができていないことが書いてあります。
もちろん、その部分だけを抽出して箇条書きにしても意味はあるのかもしれませんが、それだとなかなか身に付きません。98%の無駄な話とともに書いてあることで、記憶に残り、より実践しやすくなるのだと思います。
さいごに
一つだけ、書籍の中で記載されている重要な内容を取り上げると、文書と文章の違いをきちんと理解すべきという話です。
文書は、事象、つまり客観的事柄について書かれたものです。会社の報告書然り、報道然りです。
対して文章は、そこに適度に心象、つまり主観が入ります。随筆や社説がこれにあたります。
文書は小手先の技術で多少良くなりますが、文章はそうではありません。見て、聞いて、感じ、考えた先にあるものです。
ブログやTwitterなど、文章を書く喜びを再認することができる名著だと感じました。
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