こんにちは。ヒトツメです。
普段は簿記やExcelなどの技術的な話が多いですが、少し手法を変え、実践的なビジネスにおけるライフハック術について解説していきたいと思います。
今日は、先日読み終えたダニエル・カーネマンの「ファスト&スロー」の書評がてら、ビジネスで役に立つスキルについて、解説をしていきたいと思います。
東大で一番読まれた本?
この本は、2012年に日本語版が出た本で、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン教授の代表的な著作です。2014年9月に東京大学の生協で一番売れた本らしく、いまだに書店でこの本を見かけると、「東大で一番読まれた本」という帯が付いたまま売られていたりします。
東大生協での文庫の売上ランキングといえば、長年、外山滋比古先生の「思考の整理学」が上位に食い込んでいますが、この本も、読みやすい一方で新たな知見や考え方を与えてくれる本で、非常に読む価値が高い本だと思います。
この本は、「あなたの意思はどのように決まるか」という副題がついていますが、人間が持つ、直感を司るシステム1と、論理を司るシステム2がいかにして鬩ぎあい、どのように合理性が低い直感に従って人間が判断を行うのかということが、事例を交えて細かく記載されています。
この本を手にした人の多くは、「東大で一番読まれた本」という謳い文句につられていると考えられます。冷静に考えれば、東大生協での文庫本月間売上1位は、同じものが連続してランクインすることがあっても、数年で数十冊は発生します。むしろ、この本は、ノーベル経済学賞を受賞した研究者による、学術的研究に基づいた書物であることを重視して読まれるべきです。しかしながら、人間はそのような謳い文句に引かれ、直感に従ってこの本を手に取り、この本を読むことになります。
実際、この本は非常に面白い話を含んだ良書ですが、それ以上に、「東大で一番読まれた本」という謳い文句の方が多くの人を惹きつけます。
バイアスを使いこなす
さて、この本に記載されている内容が、ビジネスで役に立つ場合で分かりやすいのは、上司などの決裁者を納得させるようなケースです。
この本にも出てくる内容ですが、人間は、「この病気の発症率は0.2%です」といわれるより、「この病気は10,000人に17人が発症します」といわれる方が、発症率が高いように感じます。これは、人間が比率で物事を捉えるのが苦手で、且つ分母を無視して「17人」という部分にフォーカスが当たってしまうからです。
これは「バイアス」つまり思い込みによるものですが、該当の病気に対する対策費用を獲得するために逆の行動をとってしまっては、自分の不利に働いてしまいます。いかに自分の誘導したい結論に相手の直感が飛びつくように仕向けるかということは、非常に効果的です。
逆に、理論的に正しいと思われるような結論でも、言葉だけの賛同しか得られず、相手の行動までをも変えることができずに悩んでいるケースも多々あると思います。
これは、相手の理論の部分に働きかけようと「説得」しているからで、相手の直感に働きかけるように「納得」させることができていないからです。大抵事前に形成された相手方の直感は、より上の上司から言われたといった場合が多く、そのような上司への妄信を覆すのはかなり労力がかかる話ですが、なぜ相手が自分の言うことを納得してくれないかが理解できなければ、道は拓けないものです。
- 相手を理論的に説得するのではなく、直感に働きかけて納得させることが重要
- 相手が自分の思うような結論に飛びつくような直感を持つよう、バイアスをかける
さいごに
人間の意思は、思っているより自由ではなく、様々なバイアスによって歪められて形勢されます。著作の中では触れられていませんが、その歪められた意思決定が、人間関係に悪い影響を与え、時に多くの人を苦しめています。
バイアスを操って人の意思を動かすことは、うがった見方をすれば、問題のある行動に見えるかもしれません。しかしながら、時にそのようにして歪められた意思決定に苦しんでいるのであれば、うまく活用して、うまく立ち回る術を身に付けていただきたいと思います。
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